雑記

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読書というエンタメ体験をどう企画するか

出版不況と言われ約10年はたっただろうか。2000年代初頭までは右肩上がりで推移してきた出版業界は、ITがレイトマジョリティに浸透してから減少の一途をたどっている。大衆がエンターテインメントに求めるものも変わり、娯楽のさまざまなものが誕生した。そんな時代変遷のなかで、本に何が求められるだろうか。

 

出版市場の推移とエンタメ市場

1950年は約300億円の市場規模であった。10年後の60年には1000億円に増加し、76年には1兆円マーケットに成長した。96年にピークを迎え2006年ごろまで約2兆円規模を維持するが、その後は減少を続けいまは約1.6兆になる。

電子書籍の成長が目覚ましいマンガ市場は95年に約6000億円のピークを迎え、その後2010年前半には約3000億円まで減少する。しかし、電子版の市場が開拓されたため現在は約6000億円に市場が戻りつつある(紙とデジタルの割合は半々)。

ちなみに販売ルート別の売上は、書店ルートが約8000億円、インターネット書店ルートが約2500億円、電子書籍が約5000億円らしい。プラットフォームがビジネスに及ぼす影響ががわかる結果になった。

 

出版業界は娯楽市場のなかにある、エンタメ市場のひとつだ。娯楽は約72兆円でエンタメは約12兆円であり、出版は約1/5を占める。その他のエンタメセグメントは動画(約4兆円)、音楽(約1.3兆円)、ゲーム(約1.7兆円)でデジタルコンテンツが成長していると言えるだろう。

ちなみに趣味に関するアンケートによると、読書人口は約4000万人、映画人口(約0.2兆円)は3500万人、ゲーム人口は約2000万人であり、数字に直結するわけではないことがわかる。

 

フィジカルコンテンツとデジタルコンテンツの対比だが、ここ5年で9:1から7:3ほどの割合になっている。

エンタメ市場はむしろ市場拡大している。デジタルコンテンツにマーケットを奪われたので、出版市場は減少しているのだ。

 

少子化はなぜ起きるのか

人口は47年から約10年間で爆発的に増えた(2000万人増加し、9000万人の人口に)。その後は人口置換を維持していたが75年に出生率2.0を割り、現在まで減少を継続する。出生率が減ったのに人口減少が起きてないのは、平均寿命が増えたからで戦後とは約15~20歳ほど違うからで、20年ほど人口減少が起きていない理由だ。つまり、約2000万人の高齢者が突然増え始めるのだ。

 

少子高齢化すると生産人口が減り経済は縮小するだろう。出生率が減っても経済成長をしていたのは、生産人口が保たれ産業の技術革新に起因する。現在はおおきなテクノロジーの進化はいったん打ち止めのように感じるので、人口減少とともに経済は縮小をはじめるのではないか。

少子化の要因はいくつかある。ひとつは経済への不安だ。結婚と子育てには多くのお金がかかる。もうひとつは文化の変遷だ。フランスでは宗教の権力が衰退し、女性の識字率が高くなると成婚が減ったそうだ。日本では家長制度の廃止や昭和の企業文化、女性の社会進出などの、思想や強制されたルールが移り変わるときに少子化が起きるのだろう。

 

少子化を食い止めなければいけないのだが、日本の出産数は減り続けている。これは先進国に共通する傾向だが、だからといって対策を取らないわけにはいかないだろう。対策を立てられている国はフランスがあげられる。

 

対比としてアメリカやイギリスとフランスを見てみると、高齢化率は両国のほうが低い(両国は約18%に対してフランスは20%)が出生率はフランスが大きくなっている(両国は約1.7でフランスは約1.9)。それは結婚制度や家族制度が整っているからだと考えられる。婚姻の自由度の高さや子育ての行政サービスの充実、そして就労のしやすさの3つに行政が支援をしているのだ。また、三国が日本ほど急激に進行していない理由のひとつに、移民を受け入れていることもあげられるだろう。

ちなみにフランスが家族制度などに着手したのは1860年で、長い時間をかけてその文化をつくっていった。

 

変わるエンタメ体験でぼくたちはどうするか

消費者動向は経済と時代背景を反映するという。キーワードはIT革命によって娯楽の体験が変わったことだろう。

エンタメは娯楽業界のなかでもほぼ個人消費と言えるだろう。いまの日本は人口動態と個人主義の価値観により、マーケットは成長する。そしてデジタル移行により、フィジカルコンテンツは減少するのは止められない。

 

インターネットによって、あらゆるものは素早く簡単に、よりリアルに提供されるようになった。ゲームならば、画面のなかので現実とそう変わらない(と感じる)疑似体験ができるだろう。SNSは世界中の誰とでもコミュニケーションを取る体験をつくっている。これからメタバースVRの市場を開拓するだろうし、動画だってより没入感のある機器がつくられるだろう。

そんなデジタルネイティブな世界で実物の読書はどう必要とされているだろうか。勉強だけでなく、エンタメとしての読書体験を企画する必要があるかもしれない。そして来るNFTが浸透する未来が到来にも備えて。