雑記

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出版業界は斜陽産業なのか

ITの発達とともに紙離れ・活字離れと言われて10年ほど経っただろうか。出版業界における紙媒体の売上は、年々減少しているのは事実だ。そして電子書籍のマーケットが拡大しているのも本当のことだ。

しかし、出版業界は本当に斜陽産業であるかは疑問だ。なぜなら電車のなかで本を読む人はちらほら見受けられるが、タブレットで書籍を読む人はほぼ見ないからだ。なので、世間で叫ばれている現状と実際の業界動向を見ていきたい。

 

データで見る出版市場の移り変わり

出版のマーケットは約1兆7000億円ほどだ。そのうち電子書籍の売上は4500億円で、市場の約25%を占める。10年前は500億程度だったものがここまでの市場規模になっているのだから、紙離れと言われても仕方がないだろう。

しかし、タブレットで本を読む人はあまり見かけないし、自分もほぼ読まない。

ここで電子書籍市場は拡大しているが、本の市場はもっと緩やかな縮小なのではないかという仮説が浮かんだ。

 

 

コンテンツ戦国時代に突入

こちらの表を見ていただきたい。

出版市場 媒体 売上(億)
書籍 7000
  デジタル 400
雑誌 4000
  デジタル 100
マンガ 3000
  デジタル 3000
WEB記事に付随する
ディスプレイ広告
  4500
合計   22000

※筆者作成(数字は大体のもので計上)

 

よくよく見ると、電子書籍の売上の8割以上はマンガだった。書籍と雑誌などのテキスト中心のものは、紙離れのことばから連想できないくらいの売上で、全体の5%ほどに留まっている。ちなみにスマートフォンのアプリケーションを通じての漫画の売上が電子書籍の売上と同じくらいだ。

このことから見るに、紙離れという実物で読まれなくなったというのは本質的な問題ではない。なぜなら紙は媒体でしかなく、それ自体ではなく紙に書かれている情報にこそ価値があるのだから。

問題なのは、紙離れでも活字離れでもマンガ市場の拡大でもない。それは、理解しやすくて頭を使わないで満足できる「コンテンツ」がIT化により溢れかえっていることだ。

 

情報社会が娯楽にもたらしたもの

ここでいったん広告業界のはなしをする。広告市場は約6兆円で、それは20年前もほとんど変わらない。ではなにが変わったか。それはITに関する広告が誕生し、インターネット広告関連市場が3割を占めるようになったことだ。その規模は2000年のほぼ0円からはじまり、いまは約2兆円に膨れ上がっている。ちなみにWEBメディアなどにおけて主な売上を占めるディスプレイ広告は、インターネット広告うちの約3割の5000億円に上る。そして動画広告も4000億ほどの規模になっている。

このことからわかるのは無料のコンテンツがIT化とともに増殖していることだ。なぜなら、ディスプレイ広告も動画広告も提供されるコンテンツ自体は無料で、利益は広告から得ているからだ。広告規模が拡大していることは、無料のコンテンツが増産されていることに他ならない。上手い話には裏があるということ。

 

 

紙媒体は売れなくなった。その理由はITと時代の変遷によってさまざまな娯楽が生まれたからだ。
出版全盛期は、インターネットもYouTubeもなかったし、デジタルコンテンツなど存在しなかった。舞台や映画、旅行、スポーツ、そして読書など、当時の娯楽はお金を使うものが大半だった。友達に連絡するには固定電話をかけるし、話したいと思えば喫茶店か居酒屋にも行くだろう。

 

しかしいまは、連絡手段からエンターテインメントまであらゆるものが無料の範疇でできるようになった。お金も使われなくなるのもうなずける。
そして売れない本が淘汰された。現代のコンテンツにユーザーが流れていったからだ。その証拠が、電子書籍やIT関連のコンテンツ、インターネット広告の隆盛だ。

 

この流れは加速していくだろう。これから本に必要となってくるのは、速さやわかりやすさではなく、「紙にする価値があるコンテンツであるか」「普遍性のある情報か」などのように、本当にいいものがつくれるかどうかではないだろうか。