雑記

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ハイパフォーマンスを考える

文章を書くようになって、集中できているときとできていないときが明確にわかれていると感じるようになった。読書や映画、スポーツをしているときは集中しようと考えずに夢中になれる。これらと、仕事中やクリエイティブな作業をするときとの違いはなんだろうか。

 

集中には主体と受動がある

それは主体的か受動的かの違いだと思う。読書などは、やると決めるのは自分の意志だがいったん動作が始まると、基本姿勢として受動となり、立ち止まって考える必要がなくなる。読書中に疑問点を解消するために思考したり、スポーツ中に相手に勝つための刹那のジャッジなど、瞬間的に考えたり判断したりすることはあるが、大部分が受け身での体験となるため受動的な作業と言えるだろう。

反対に仕事やクリエイティブな作業は、作業の中で何度も立ち止まって考えることがある。また、作業を継続しながらもその中で考えていることもある。ぼくの場合、まず構成を考えて文章を書き出すが、その間も考えが並行して進行しているので、構成にない文章が入ったりする。この立ち止まりの頻度が多かったりインパクトが大きいと、集中力が途切れるのだと思う。

 

このようなことから、受動的より主体的のほうが集中力を継続させることは難しい。しかし、私たちがビジネスで必要とするのは主体的集中力だ。

では、どのようにしたらこの集中力をうまく扱えるだろうか。ぼくは、ロールモデルとして藤井壮太さんなどのプロ棋士の集中力を参考にしたい。彼らは一日の対局でー食事と休憩をはさむがー極限に集中してハイパフォーマンスを発揮する。ここにヒントがあるのではないだろうか。

 

集中を乱すマルチタスク

棋士の集中力を考える前に、集中できていない状態を考えていきたい。それらを考えるきっかけになったのがスウェーデン精神科医アンデシュ・ハンセン氏の著書「スマホ脳」だ。スマートフォンを日常的に使うと、脳の負荷が10%増えてパフォーマンスが低下するという。

 

パフォーマンス低下の原因は、スマートフォンによるマルチタスクだ。マルチタスクとは、複数の物事を並行して進行することである。スマートフォンがあるだけで発動してしまう。

なぜそうなるかと言うと、人間の生存本能に由来する。食事や性交、排泄などひとつの行為に集中してしまうと、肉食動物に襲われたとき逃げることができない。そのため、行為に意識を一点集中するのではなく、複数に集中を分散する脳機能が発達した。その名残から、マルチタスクは集中しない状態をつくりだしてしまうのだ。

 

なぜスマートフォンマルチタスクに繋がるかというと、SNSやソーシャルゲーム、アプリの通知によってマルチタスクを引き起こしてしまう。マルチタスクが発動すると脳内の報酬系にアクセスし、ドーパミンが分泌される。そのことが脳に記憶され、集中力を分散してしまうのだ。また、短時間でドーパミンの分泌を繰り返すと中毒症状になり、スマートフォンを手放せなくなってしまう。

SNSやソーシャルゲームは、承認欲求から来るものではないかという意見もある。それは間違いではないと思うが、マルチタスクによる弊害も引き起こしている。スマートフォンが普及している現代では手放すことは難しいかもしれないが、うまく付き合う必要があるだろう。

 

ロールモデルから考えるハイパフォーマンス

棋士を切り口に主体的に集中する方法について考えていきたい。棋士の対局の場をもっとも集中できる状態だと仮定すると、主にふたつの軸があると思う。

 

ひとつは、ストレスになるあらゆるものを排除することだ。

ぼくも将棋ではないが囲碁の有段者であるので、なんとなくわかる。思考の邪魔になるものを、頭のなかに入れないようにするのだ。

その他に服や日常用具、食事や運動などを自分の思考を妨げないようにする。たとえば、寒かったり暑かったりすると、すごく気になるわけはないが、後の方になって思考が乱れたり、いつも通りにならなかったりする。

とくに仕事道具は重要だ。使い慣れたものだと、それこそ自分の皮膚のように扱うことができるなど、違和感が少なくなる。営業マンがスーツを仕立てるのも、見た目以上に仕事のパフォーマンスを気にしてのことだ。既製服と仕立服を着比べても瞬間的には違いはないように思えるが、疲労が蓄積されると大きな違いになる。

 

もうひとつは、集中できる環境をつくることだ。

排除することと環境をつくることの違いは、-X→0と0→1の違いである。前者がマイナスをつくらないようにするのに対し、後者はプラスをつくることなのだ。

環境をつくるには、習慣やルーティンなどがある。ストイックで知られるイチロー氏は、試合の前・中・終わりでやることが決まっているという。それを年中通して行い、何十年継続している。ハイパフォーマンスの裏には、自ら環境をつくりだし集中力を高める努力があったのだと思う。

 

 

知識やスキルの獲得でもビジネスでもクリエイティブでも、結果を残すことが重要だ。そのための、ストレスの排除と環境の構築は引き続き考えていきたいテーマだ。