「書くように話す力」でプレゼンテーションの達人に
プレゼンテーションは、準備する文章のクオリティによって、成否がわかれる。
例として、アメリカの大統領の演説などでは、いかにも今考えて話しているような臨場感をもって語りかける。しかし、元となる文章は、数か月かけて練り上げられたものである。その他の例として、映画「ウルフオブウォールストリート」のモデルとなった、ジョーダン・ベルフォートも営業の秘訣は台本をつくることだと言っており、いかに話す内容が重要かを示していると言える。
文章は構築物だと認識し、三つのプロセスで築き上げよう
文章を構築する際のプロセスは、基本的には次の三つ。
・書きたいテーマ(気づきや主張)を見つける
・テーマからキーコンセプト「言いたいこと」をつくる
・三つのキーコンセプトを結び付けて文章を構築する
「文脈をつなげる力」はこうやって鍛えよう!
意味のある部分だけ抜き出し、意味のある部分をつなげていく。文章の順序を入れ替えたり、無駄な個所を削ったりして、わかりやすい文章に仕立てる。
通過地点を決めて三段論法で文章をつくろう
キーワードを三つほど選び、それをスタートとゴールの間をつなぐ通過点として配置する。そして文章は次のように論を重ねる。
・大前提(人間は死ぬ)
↓
・小前提(ソクラテスは人間である)
↓
・結論(故にソクラテスは死ぬ)
初心者は、三つの論点に絞り、文章を書いて、まず書くことから慣れよう。
その他
・「正・反・合」の一人弁証法で書くための思考を深める
・文章の良し悪しは、声に出して読んでみるとわかる。文章がねじれずに流れているかよくわかる。
・本を読む、文章を書くにも、期限を設けると生産力が上がる
制限時間を決めて、その中で読もう。文章のための読書は、必ずしも全部読まなくてもよく、例として重要な個所2割ほどでもよい。
・書く力のおおもとは読む力にある
斎藤氏は、1000冊で1冊書けると言う。
・引用で使える文章はストックする
書く力を鍛えた40冊(うち筆者セレクト)
・きまぐれロボット(星新一)
この作品は「起承転結」に沿って物語を構成するときの教科書となるほど、参考になる。ショートショートで、「へえ」と言わせられるので、短文の参考にも。
・これなら読める龍馬からの手紙(斎藤孝)
自由でしなやかな手紙。そして比喩が上手で、表現も自在である。自身の気持ちをオープンにして、人の心を楽しませる人物とうかがえる文章である。
・枕草子(上坂 信男, 神作 光一 )
エッセイの出発点。自分の好き嫌いが明確であり、そのためはっきりした文章である。「新しい発見」を日常で見つけるお手本のような本。
・新版 徒然草 現代語訳付き(小川 剛生)
日常を取り上げ、そして教訓がある。形式も参考になり、細かい話にわかれている。
・ラッセル幸福論(安藤 貞雄)
一文一文の意味がはっきりしていて、訳してもすっきりと頭に入ってくる。原文を和訳する訓練をすると日本語が上手になる。
・方法序説(谷川 多佳子.1997)
時代を超えてわかりやすく、透明度の高い文章である。厳密な思考をして要素を絞り込んで、ちゃんとメモしてから書くのが大事。デカルトのように何語に翻訳しても意味にブレのない文章、つまり透明度の高い文章を書けるようになってもらいたい。
文語の文章の美しさがよくわかる。イエスの一つひとつの言葉がことわざになるくらい、言葉として強度がある。そして、訳した人たちも本当にすごいエネルギーで、日本語力の高さがわかる。
文豪の文章は真似できないが、本当に上質な文章を読むことは、重要だ。
おすすめは、声に出すこと、元の古典と読み比べること。元の古典は「今昔物語」や「宇治拾遺物語」など。代表的なものは「鼻」。
太宰は短編の名手である。特に「女生徒」は、女生徒の気持ちになって、実際に女生徒が独白するような文体で書かれている。その他に口述筆記で書かれた「駆け込み訴え」や、美しい日本語で書かれた「走れメロス」がおすすめ。
文豪・谷崎潤一郎が、小説でなく実用文を書くために書き下ろした、文章指南書。どの人が読んでも一通り勉強できるようなことが書いてある。
・ベストセラー小説の書き方
物を書くときに知っておくべき知識や心構えがたくさんかかれている役に立つ本。
・新訳 君主論
読みやすい文章の白眉である。目次が常に文章で書かれていて、その目次を読むだけで、その項目について語られる内容、課題がほぼわかる。構成の一例になるし、忙しい高位の人に、いかに読んでもあるかの参考に。
・ツァラトゥストラ(手塚 富雄)
訳者の日本語がうまく、ニーチェの文体がわかる。ニーチェが文章を書くときには、血で書くくらい高邁な精神で書いていた。それだけ覚悟を持って書いている。