雑記

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「数学受験術指南」森毅 書評

タイトルに書かれているように、大学受験の数学勉強法について書かれた本だ。しかし、社会人が読んでも学びは多い。人生においてモノの学びかた・とらえかたに置き換えられるからだ。成果が出ないと感じる人は、まずやり方や考え方を疑ってみる必要がある。著者である数学者から新しい考え、視点が得られるはずである。

 

一生通じて役に立つ勉強法

なぜ数学の本を紹介するのか。その理由は、数学は生きていくうえで必要だからである。営業やマーケティング経理、資材調達などビジネス上必要な能力であり、数学ができることにより年収も他と比べて上がっていく。

数学ができなくても生きていけるという反論があるが、数学という考え方を使い、人生を突破できることは多い。たとえば、ある事象を相対的に比べる、統計をとる、帰納法的にまとめ正誤を判断するなど思考の補助ツールとして役に立つ。

さて、「数学受験指南術」は受験勉強を通して、大学生・社会人になったときにも役に立つ勉強法を教えてくれる本である。私が気になった箇所を紹介する。

 

個性で勝負

これは、言葉だけ受け取ると納得しないが本書を読めば納得するはずだ。

受験とは競争である。受験生のなかで、「人並み」から抜け出せたヤツが受かる構造である。そうであるならば、横並びで教えられる技術だけを使い受験勉強に挑み、あとはガンバリでしか差がつかないのは危険だ。競争に勝つにはどうするか。自分がもっとも勝率が高い技術で勝負することだ。それが個性だと著者はいう。

みんな、教えられた方法が自分に合わずに、オリジナルをためして周囲より成果を出した経験があるのではないか。人並み、つまり周りと同じ方法で負けるなら、オリジナルを探すのもひとつの手である。

ただしこの方法は自己理解が必要だ。つらい作業になると思うが、新卒採用の就職活動や転職活動時、社会人の節目で1度はすることになるので、そのトレーニングだと思いやってほしい。

 

ムダな努力は認めない

これは、その通りではないだろうか。努力する過程が重要なんだという人もいる。本人にとってはよい経験で、大事なことだが、自分の目的を達成するためには役に立たない。

夢を達成することと、夢を見続けること、どちらが幸せだろうか。私は達成するの一択だが、夢を死ぬまで見続ける状態が幸せという人もいる。これは価値観の問題だが、どちらがよいか考えてみてはどうだろうか。

今は挑戦するときではないと考える人に複利の考えを持ってもらいたい。仮に目的を1年後達成するのと30年後達成するのとでは、残りの人生に対しての価値が違う。現在25歳で80歳で死ぬ予定として比べると、前者は54年間、後者は25年間の目的達成による報酬や権利を得られることになる。どちらが得か、答えは歴然である。なので、ムダな努力をするのではなく、結果にこだわった行動を私はすすめる。

 

王道は自分の道

結論からいうと、この本で一貫して言われている自分だけの技術を見つけろということだ。もちろん「巨人の肩に立つ」とニーチェがいうように、有史以来築かれてきた知識を学ぶなということではない。古典の基礎は大事だし、もともとの論理がないと解けない問題も多い。しかし、それらだけに頼っていては例外が起きたときに、自分で回答ができなくなる。世の中の問題に「解なし」などいくらでもある。そのときに試行錯誤し、ベストな答えを導き出すことが「自分の道」である。

「自分の道」を見つけ、本音でズーズーしく生きる。これが豊かな人生だと言えるのではないか。