雑記

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学びとは何か 今井むつみ 書評

世の中の多くの人は、やりたいことを仕事にしている人は多くない。米国のGallup社によると、日本において今の仕事が好きと回答した人は6%であり、情熱を持っていないと答えたのは70%であった。

人生で仕事に費やす時間は約7割とも言われ、どうせ働くなら好きなことを仕事にしたいと思った。ここで鍵となる考えは、好きな仕事=何を学ぶか、ということだ。

本書では学びのメカニズムを探っていくと共に、一流と言われる人の学び方に焦点を当てて書かれている。

 

新しい知識は、スキーマという考え方の土台となる概念と照らし合わせて理解される。つまり、個人が持つ知識と未知の情報を対比して、その情報が蓄積されるのだ。だが、スキーマによって未知の情報が理解されるため、全てを受け入れて知識にできるわけではない。この行動は確証バイアスと言われる。

では、どのように確証バイアスを乗り越えて知識となるのか。

それにはスキーマという土台を再構成する必要がある。自身のスキーマ=思い込みを壊すためには、論理的思考と批判的思考によってスキーマを組み立てなければならない。

本書に登場する一流の人として羽生善治が紹介されるが、彼らは思いこみを常に破ろうとしている。

 

一流の人を数値的に分析すると、練習時間と相関関係がある。ただ時間を消費しているではなく、高い集中力で行っている。そして集中力の質は、学びにマズローの欲求5段階説における自己実現欲求のような、ありたい姿のビジョンがあるかによっても変わる。共通したスキルとして、は自己分析力や自己管理力、目標設定力が優れている。

そして一流者は飽くなき向上心を持つ。葛飾北斎が死に際に残したことばは「もう10年、いや5年の命を与えてくれていたら、まことの絵師になれただろうに」だったそうだ。

 

学びは探求する心は遊びのなかから育てられる。遊びはそれ自体が目的で、楽しめ、能動的なものだ。学ぶとは、知ることやつくることに喜びを感じるものなのだろう。発見する、その単純なことが利害や利益、効率性を求めず、ただ楽しいと感じることなのだ。

 

何がやりたいかわからない。好きなことだったのに、いまはそこまででもない。効率性を求めて結果を残したが、これでいいのかと思っている。このように感じている人にぜひ読んでもらいたい。これから何をしたいのか、その方向性を考えるうえでの参考になることだろう。